夫婦やカップルで暮らしていると、避けては通れないテーマ。
それは家庭内のパワーバランス問題。どっちが家で強いのか?という問題。
日本語でも「尻に敷く」「亭主関白」「かかあ天下」など色んな表現があります。そしてドイツ語にもこの力関係をリアルに切り取った表現がたくさんあります。
しかもこれらのほとんどの表現は、知ってないと意味が理解できないもの。たとえば「ズボンをはいている」が家庭内で主導権を握っているという意味になったりします。
それをここでいくつか紹介しましょう。
ズボンにまつわる
普通に「今日ズボンをはいている」はドイツ語でなんというでしょうか?
Ich trage heute eine Hose.
Ich habe heute ein Hose an.
ですよね。tragenまたはanhabenを使います。
そして「尻に敷く」または「家庭内の主導権を握る」も
die Hosen anhaben
と言います。(tragenの方は使えません)
注意するのはズボン(die Hose) の形。主導権を握るの意味で使うときは、複数形でなおかつ定冠詞をつけてください。
昔は「男性=ズボン、女性=スカート」だった時代背景から、「家庭内でズボンを履いているのは誰だ?(=どっちが一家の主として仕切っているのか?)」という比喩から来ています。
現代では誰でもズボンを履きますが、心の中にある「一家に一本しかない見えないズボン」をとりあってるイメージですね。ズボンは複数形やけど!
友人の家に遊びに行ったときからかい混じりにこう聞いたりします。
Wer hat bei euch die Hosen an?
家では、どっちがズボンを履いてるん?
(= どっちが主導権を握ってるん?)
これに対する答えは、もちろん2パターンに分かれます。
Bei uns hat meine Frau die Hosen an.
うちでは、妻がズボンを履いていますよ
(= 完全に妻の天下です)
または
Er hat zu Hause die Hosen an.
彼は家でズボンを履いている
(= 家では彼が亭主関白だ)
それでは次の表現。
☆☆
どっちの意見が通るか
「誰がズボンをはいているか」という大枠のボス争いとは別に、日々の生活の中ではもっとリアルな小競り合いもありますよね。
休日にどこへ出かけるかとか、家具は何色にするかとか、今日の晩ごはんは何にするかとか。
そういう日常の話し合いやケンカの中で、「結局どっちの意見が通るん?」「どっちが押し勝つん?」というときに使われるのが、
sich durchsetzen
です。sichは四格です。再帰動詞。
durch(突き抜けて)+ setzen(置く)で、反対意見を突き破って自分の思い通りにする、という意味の再帰動詞です。
「誰が一番偉いか」という肩書きの話ではなく、日々のリアルな力関係でどっちが勝っているかを聞きたいときに、友達同士ではよくこう聞きます。
Wer setzt sich (bei euch) durch?
君らのとこは、どっちの意見が通るん?
(= 結局、どっちが強いん?)
もし旦那さんのほうが口が達者で、いつも自分の思い通りに話を持っていくタイプなら、こう言えます。
Er setzt sich beim Streit durch.
彼はケンカになると自分の意見を押し通す
(= ケンカになったら彼が勝つ)
ただ、実際のところ世の家庭で一番よく耳にするのは、こちらのセリフかもしれません。
Am Ende setzt sich sowieso immer meine Frau durch.
結局のところ、どうせいつも最後は妻の意見が通るんやけどね
(= 最後はいつも妻が勝つ)
文の中に入っている sowieso(どうせ) という単語が、なんとも言えないリアルな諦め感を出しています。
ちなみにsich durchsetzenではパートナーや夫婦間だけでなく、学校や仕事などでも使うことができます。
たとえば仕事では周りに流されてばっかりではいけないこともあります。
Im Beruf muss man sich manchmal durchsetzen.
仕事では時々自己主張することが必要だ。
みたいな。
また、sich durchsetzenは「定着する」など他の意味もありますので、文脈によっては注意が必要です。
使うための表現は以上ですが、見てわかるまたは聞いて理解できるために知っておいてもいいもう一つの表現を紹介します。
興味ある方だけどうぞ。
☆☆
スリッパにまつわる
ズボンに続いて、もうひとつ履き物にまつわる表現があります。
それは Pantoffel(スリッパ・部屋履き) 。
ちょっと古い表現でもあるし、またスリッパは地域差が激しく、Pantoffelを使う地域がだいたいドイツの北西部であるため、一般的ではないかもしれません。
ちなみに私の住むヘッセン州では全く使いません。知らないネイティブもいるかもしれないので、参考程度にどうぞ。
ちなみにスリッパの標準語は
die Hausschuhe(正統派)
口語では
die Schlappen
を使うことがうちでは多いです。
日本語では「尻に敷く」と言いますが、ドイツ語では直訳すると「スリッパの下に立つ」という言い方をします。
unter dem Pantoffel stehen
これで「尻に敷かれている」という意味になります。さっきのdie Hosen anhabenより直訳の尻にひく感じですね。ネガティブ感が増してる感じ。
そしてズボン(die Hosen)のときは複数形でしたが、こちらは単数形(dem Pantoffel)です。
Er steht total unter dem Pantoffel.
彼は完全にスリッパの下に立っている
(= 完全に尻に敷かれている)
結婚などを機に「尻に敷かれるようになった」と変化を表すときは、動詞に geraten(〜な状態に陥る)を使って、4格(den Pantoffel)にします。
Nach der Heirat bin ich total unter den Pantoffel geraten.
結婚してからというもの、完全に尻に敷かれてしまった
また、関連する言葉として
Pantoffelheld
(スリッパの英雄)
という名詞もあります。
外では偉そうにしているのに家では妻に頭が上がらない夫、つまり「恐妻家」や「内弁慶」のことです。
さらに、敷かれすぎて完全に相手の言いなりになっている状態を表す、こんな表現もあります。
jemandem die Pantoffeln hinterhertragen
人(三格)の言いなりになる
(人の後ろをスリッパを持ってついていく)Ich habe ihm nur noch die Pantoffeln hinterhergetragen.
私はただ彼の後ろをスリッパを持ってついて回っていただけだった
(= 完全に彼の言いなりになっていただけだった)
☆☆
まとめ
今回は家庭内のパワーバランスにまつわるドイツ語表現を紹介しました。
1.die Hosen anhaben
ズボンをはいている
=主導権を握っている。家庭内のボス。
2.sich durchsetzen
自分を押し通す
3.unter dem Pantoffel stehen
スリッパの下に立っている
=尻に敷かれている(ちょっと古め)
実際に日常会話で得使うなら、家庭関係であればdie Hosen anhaben、人間関係全般であればsich durchsetzenを覚えておくと役に立つと思います。
みなさんの過程ではどっちがズボンをはいていますか?・・・じゃなくて主導権を握っていますか?
ちなみにdie Hose anhabenの状況にぴったりな日本文学はこれだと思います。
unter dem Pantoffel stehenにぴったりなのはこれでしょうか。
半日(青空文庫)
また、尻に敷かれるの究極形は個人的には
真面目なサラリーマンが、カフェで一目ぼれした若い少女を引き取り、自分好みの理想の女性に育てようとするが、結局自分が尻に敷かれてしまうという作品。けっこうな印象に残った作品でした。これらの表現を覚えるついでに読んでみるといいかも。
動画解説はこちら
☆☆
ドイツ語は「現地の教科書」をメインに勉強することをおすすめします。
教科書をやりながらこのサイトや動画を知識の補足、補強に使ってくだされば本望です。
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