ローランドに学ぶ再帰代名詞がある理由【ドイツ語メモ12】


先日Xでホスト界の帝王ローランドのこんなツイートを見ました。

 

「大好きって言われた時は基本「え、俺も大好き!」って返すんだけどそれは「俺も(ローランドが)大好き」という意味であり、あくまで共通の趣味で盛り上がっているみたいな感覚なんだがこれって俺がおかしいのかな?

 

この人ほんとうにボケるの上手いよね。

・・・じゃなくてこれがさ、まさにドイツ語に再帰代名詞が必要な理由なんだよ!と思ったので解説しましょう。

いい例を出してくれて感謝ですローランド。

 

みんなさ、ドイツ語の代名詞(ichとかduとか)にも格があって、必死で覚えている&覚えましたよね。ich mir michとかer ihm ihnとか

それで間もないうちに再帰代名詞っていうすごい似てるけどなんか違う種類のやつが出て来て「なんでやねん一個でええやんけ」「なんでそんなもんがあんねん」と憤慨してる人も多いでしょう。

 

だって日本語にはないのだから!!

 

英語には存在しますが、ドイツ語ほどは多用しないとも聞きます。

さっきのローランドのツイートはドイツ語に再帰代名詞が存在しなかったら言えない表現なのですね。

だから再帰代名詞の存在意義を知りたい方は少し覗いていってください。

 

初級の方でも大丈夫です。レッスンで再帰代名詞を初めて見た方には似たような説明をしています。

今回はレッスンでよく使う動詞(loben=褒める)を例にとりましょう。

まずlobenは四格(A)をとる動詞で、Aを褒める、と訳します。

変化形はこちら。

loben 
ichlobe
dulobst
er, sie, eslobt
wirloben
ihrlobt
sieloben

 

それでは適当に四格をつけてみますので訳してみてください。

これで文が完成しています。

lobenAkkusativ
ichlobedich
dulobstihn
er, sie, eslobtmich
wirlobensie
ihrlobtuns
sielobeneuch

訳は・・・

Ich lobe dich.(私が君を褒める)

Du lobst ihn.(君が彼を褒める)

Er lobt mich.(彼が私を褒める)

Sie lobt mich.(彼女が私を褒める)

Es lobt mich.((中性名詞の誰か)が私を褒める)

Wir loben sie.(私らが彼女/彼らを褒める)

Ihr lobt uns.(君らが私らを褒める)

Sie loben euch.(彼ら/あなたが君らを褒める)

ド直訳ですが、代名詞の四格が入っています。

これで人を褒めることができますね。

 

じゃー次。

自画自賛をしてみましょう。

私が自分を褒めたり、彼が彼自身を褒めるという文を作りたいのですが、自画自賛しているのはどの文でしょうか?

自画自賛してるのは?lobenAkkusativ
ichlobemich
dulobstdich
er, sie, eslobtihn, sie, es
wirlobenuns
ihrlobteuch
sielobensie

訳はどうでしょう?

どの文は自画自賛していて、どの文はしていないですか?

Ich lobe mich.

Du lobst mich.

Er lobt ihn.

Sie lobt sie.

Es lobt ihn.

Wir loben uns.

Ihr lobt euch.

Sie loben sie.

そう、

Ich lobe mich.

Du lobst mich.

Er lobt ihn.

Sie lobt sie.

Es lobt ihn.

Wir loben uns.

Ihr lobt euch.

Sie loben sie.

この文は自画自賛してない!

Er lobt ihn.だと彼が自分を褒めているんじゃなくて、べつの彼(ihn)を褒めているということになりますよね。

他の黄色い人たちも同じです。

たとえば

Der Vater lobt seinen Sohn.

=父が息子を褒める。

これを代名詞にしたら

Er lobt ihn.

に他なりません。

 

えええじゃあさ、ローランドが自画自賛するんだったらどう言うの?

言えないやん!

Er lobt Roland?

Roland lobt Roland?

これも同じ名前の人は複数人いるし同一人物とは限らない。

これはどう?

Roland lobt selbst.

あかん、selbstは四格じゃありません。lobenは四格をとらなアカンのです。

代名詞しかなかったら三人称が自画自賛している、が言えないのです!

 

Er lobt ihn.は「彼は彼自身を褒める」ではないのです。「自身」がどこにも入ってない。

Ich lobe mich.は「私は私を褒める」は「自身」が入ってなくても同一人物ってすぐわかるけどね。

私やあなたに「別の私」や「別のあなた」は今のところいないからさ。フロイトやユングは別の書き方してるかもしらんけどね。

 

ということでこれを言うために必要なのが再帰代名詞なわけ。

これが全員無事、自画自賛ができている文です。

全員自画自賛!lobenAkkusativ
ichlobemich
dulobstdich
er, sie, eslobtsich
wirlobenuns
ihrlobteuch
sielobensich

三人称だけがsichに変わっていますね。これが「〇〇自身」の意味です。

Er lobt sich.

Sie lobt sich.

Es lobt sich.

Sie loben sich.

主語と目的語が同一人物になりました。

他の人称代名詞は変化せず、三人称だけが変化する理由もこれで明白ですね。

めでたし。

こんなかんじで、ドイツ語には再帰代名詞が必要な理由がお分かりいただけたでしょうか。

代名詞だけだと言えない表現があるからなんです。

もちろんこれは1例で、再帰動詞の文法で出した本物の再帰動詞のほうはまた機能が違いますけどね。

 

ということでローランドと一緒に練習。

自己愛を強くしよう!lieben!

ここに自分を愛していると入れてみましょう。

自己愛を強くしよう!liebenAkkusativ
ichliebe
duliebst
er, sie, esliebt
wirlieben
ihrliebt
sielieben

できましたか?うっかり他人を愛していませんか?

答え↓

自己愛を強くしよう!liebenAkkusativ
ichliebemich
duliebstdich
er, sie, esliebtsich
wirliebenuns
ihrliebteuch
sieliebensich

矛盾点はないでしょうか。

それでは最後にこちらのローランドの日本語ではボケボケになる名言をドイツ語に訳してみます。

「大好きって言われた時は基本「え、俺も大好き!」って返すんだけどそれは「俺も(ローランドが)大好き」という意味であり、あくまで共通の趣味で盛り上がっているみたいな感覚なんだがこれって俺がおかしいのかな?

Wenn mir jemand sagt “Ich liebe dich total”, dann sage ich “Ich liebe mich auch total”.

・・・ここで終わりですよね。これ以上何もできません。

ドイツ語だとめっちゃスベってます。ちょっと痛い。

日本語はすばらしい。

それでは。

納得した方は観念して再帰動詞をもう一度勉強しよう。

再帰動詞と再帰代名詞 -Reflexive Verben und Pronomen- 【ドイツ語文法...

再帰動詞には本物と偽物がある。本物は再帰代名詞なしでは使えない動詞、偽物は再帰代名詞がついたり四格目的語がついたりする動詞。

☆☆

ドイツ語は正統派「現地の教科書」をメインに勉強することをおすすめします。

教科書をやりながら他のメディア、このサイトや動画を知識の補足と補強に使ってくだされば本望です。

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☆☆

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der Stau「渋滞」【ドイツ語の表現】

キレ気味にこの文をドイツ語に訳してみましょう。 「逆走してるやつがこの渋滞を起こしてん(怒)」

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