テストモードと実践モードについて。

2025年9月19日著者: Nana

言語そのものは同じなのに、学習者によってアウトプットの仕方は驚くほど異なるものだと常に感じています。

大きく分類してみると2パターンある気がします。仮にそれをテストモードと実践モードと名付けましょう。

それぞれを図解で示してみます。

 

テストモード

教科書でも本でも単語でもなんでもいいのでとにかく1課目、または文法1、またはテーマ1を勉強する。

頭の中はこんな感じ。脳に記念すべき新しい言語が生まれる↓

終わったら次は順調に2課目、または文法2やテーマ2を勉強する。

頭の中には1の他に2の記憶が生まれる↓

同じく3,4,5、、と続いていく。小さい練習問題とかして解けるか確認などもする。

脳の中はおそらくこんな感じ↓

知識が増えてきた。脳の中にもいろいろな文法、単語、テーマが浮いてきた。

と同時に人間は忘れていく生き物でもある。

記憶は古いものから薄れていく↓

でもさらに5課が終わったので次の6課も勉強する。

同時に1課や2課はさらに忘れる。↓

新しいものの習得+すでに勉強したものの忘却。

そろそろ飽きがきたり辛くなってきて適当になってくるけどとにかくすすめなければと思う。

6,7,8課でももれなく繰り返す。↓

初級(A1)の教科書は8課~15課前後で構成されていることが多いのと、単語数はだいたい600~800ぐらい。

本の終わりも見えてきたので早く終わらせたい。さらに適当になるけどなぜかスピードが上がるのもこのころ。

がんばって9,10をやる。↓

やっと10課!A1終わった!

あんなに分厚かった教科書をやり遂げた!達成感!

しかし達成感の脳の中はこんなかんじ↓

実はほとんど忘れている。

それを阻止しようと復習を頑張ってしている人はちょっとはましかもしれない。でもこれぐらい?↓

テストモードタイプはとにかく大量の単語や文法に触れます。「とにかく書いてあることを丸暗記!」というやり方です。学校教育の英語を習っていた時と似たような勉強だと思います。

受験勉強のように目標とかを決めて、〇〇までに〇〇をする!っていう感じなので量とスピードを重視するんですね。

まぁそりゃそーだ。それしか勉強法を知らないという人は多いし、学校の中間期末テストや受験などのために英語を勉強するんだもんね。

しかしテストには合理的かもしれませんが、言語としては一番大事なところを見落としていると思うのです。それは繋がりと全体性。質と言いかえてもいいかもしれません。

それぞれにつながりがなく、単品でぷかぷかしているのがこの図ですね。

なんかもったいないね?すみませんディスって。特定のテストでいい点数が取れるのがメリットだと思います。たとえば入試とか。

この学習の特徴は読解力で一発で見分けがつきます。テキストの文と習った文法がつながっておらず、どの文法で書かれているのかが理解できない。文法めっちゃ勉強してるのに!しかし文法の練習問題は解ける。というのが特徴です。しかし正しい意味の解釈や、すべてを総合しなければできない作文や会話などの応用力が乏しく、いつまでたってもしゃべれない・・・と悩むことになるのです。

ひとつドイツ語の実例で紹介します。あなたはどちらのタイプか、モードテストとしてご活用ください。

テストモードで長年勉強した後で、私のところに来てB1の試験対策をしてほしいとご希望された方が一番最初に書いてきた作文がこちらです。

*以下の文は全て正しくないので参考にしないでください。

Ich antworte dir über die Frage.  

Kann ich dir Geschirr waschen helfen? 

Ich beitrete mir eine Versicherung. 

Ich habe meine Freundin über den Weg begeben. 

Meine Eltern beistehen mir finanziell.

Ich habe Alkohol abgesagt.

Er hat mir geraten, wie man das Bericht.  

Ich diene einem Rathaus. 

Die Kollegen ähneln dem Mitarbeiter.

Bitte folgen Sie mir bitte, um nicht zu verlaufen.

B1~の人がこの例を見て、「え?どこがおかしいの?ちゃんとしたドイツ語やん?」と思ったら、あなたはテストモードである可能性が高いです。

もし「へ?いろいろ理解できひん。文法も単語選びもやばいやん。」と思ったらあなたは実践モードでしょう。

以下解説。↓

この作文は見ての通り、かなり幅広くて高度な動詞(dienen beitreten, beistehen, verlaufenなど)を使って例文を書いていますが、単純な文法の間違いはこれだけあります(黄色)。そして文法は正しいが明らかに許容できない範囲の表現ミスはオレンジで記しました。訂正前です。

Ich antworte dir über die Frage.  

Kann ich dir Geschirr waschen helfen? 

Ich beitrete mir eine Versicherung. 

Ich habe meine Freundin über den Weg begeben. 

Meine Eltern beistehen mir finanziell.

Ich habe Alkohol abgesagt.

Er hat mir geraten, wie man das Bericht.  

Ich diene einem Rathaus. 

Die Kollegen ähneln dem Mitarbeiter.

Bitte folgen Sie mir bitte, um nicht zu verlaufen.

そもそも文の意味が読み取れないものもあります。

正しく書けているのは1文。なのですがこの1文も文法と表現は合っていますが、実践的に見るとそんなシチュエーションなくない?という感じがするかもしれません。Die Kollegen ähneln dem Mitarbeiter.は「同僚たちがその同僚に似ている」という奇妙な意味になります。そもそもなんでMitarbeiterとKollegenをここで書き分けてるのかも分からないし、似ているとしても一人なのでは?つまり主語は単数形なのでは?と思うからです。二人同時にある人に似ていることなんてあるでしょうか?この主語が双子ならありえますが、そこまで考えて書かれた文なのかは疑問です。

またはIch habe Alkohol abgesagt.は「アルコールを断った」と言いたかったとその生徒さんは言われたので、それでは相手に通じるように言い直してみましょうか、というと考えた末に何も出てきませんでした。たとえばIch trinke keinen Alkohol mehr.やIch habe mit Alkohol aufgehört.のような言い換えができれば実践でも使えますが、何も出てこないというのは応用力がないということです。

つまり頭の中で日本語の単語をそのままドイツ語に変えることしかできない。なので単語を覚えているかいないか、の暗記のみになってしまいます。さらにすべての日本語が直訳できるわけがないので、変な文がたくさん出てくるわけです。大量暗記の結果の典型的テストモードです。

B1であれば、今持っている知識で言い換える技術、つまり応用力は多少は必要です。ということでA1の後半からやり直すことになりました。これも長い戦いですが、あきらめなければいくらでもよくできる例です。

すべてを間違えているこの例を出すなんて極端じゃないかと思われるかもしれませんが、テストモードのまま中級に突入した人たちはこういう文を平気で書く人が多いです。

何よりもまずいのが、ミスを指摘されたときに「何が間違ってるのか見当がつかない」という姿勢であることです。ミスを先生に直してもらって答えを教えてもらう、と考えているのかもしれません。でもそうではないんです。習った文法や単語においてはミスはある程度自分で訂正できなければならないのです。そのトレーニングが必要です。

☆☆

実践モード

一方で実践モードで言語を学習している人の脳ってどんな感じなんでしょう?どんなふうに言語を脳で処理しているんでしょうか?

まずは知ることから始めよう。こんな脳の使い方をしてる人もいるんだよ!現地で最初から強制的に実践をする必要があると、自然とこちらになる人は多いかもしれません。でも日本で育って日本の義務教育を受けたのだから、そうでない人もたくさんいます。だから知ることから。実践で使える言語習得とは。という基本的なものです。

学ぶ内容は同じでも頭の中はずいぶん違うのが分かると思う。

まず最初。ここまではだれでも同じ。

課題1をインプット。脳に記念すべき新しい言語が生まれる。↓

でも次の課題を学ぶ過程ではこうなります。↓

2課目ですでに大きく違う。ここから差が出ます。

最初にやったものの周りに少しだけ、次の課題2を補足する。

2の全部は無理。脳にはキャパがあるから。そして課題1があくまで中心。

課題1の器を大きくする作業を次の課もやる。↓

課題1を中心に、2と3が少しずつ周りを取り囲んでいます。

そのうち少しずつですが融合してきて、こうなってきます。↓

少しずつ大きく。いろんな知識を融合させていく。

A1やA2が終わるころにはその器が少しずつ大きくなっていれば成功。↓

最初から器は1つのみ。もちろんこっちのタイプでもたくさんの習ったものを忘れていきます。最初は時間がかかるのはこっちのほうかもしれません。

しかし忘れていくにしても少しずつ器が大きくなって統合されていくのがお判りでしょうか。この人たちは最初から簡単な会話ができるのが特徴です。もちろんミスはたくさんするし単語は少ないですが。定着させるには本当に時間がかかるんです。

この器を大きくするのにどれぐらいかかるかは人によってずいぶん異なり、一回に学ぶ単語や文法の量は少ない。勉強にも時間がかかるので、モチベーションがなくなって辞めてしまったりするとこの器はまた縮んでしまいます。

しかし最初から作文を書けるし会話もできる。定着しやすいのもこちらかもしれません。

そしてこれが最も大事なのですが、こっちのタイプはミスをしたときに自分で気づけることが多いのです。パターン1の人は言語が統合していないので、暗記しているかしていないかのみになってしまい指摘された自分の文の何が変なのかわからなかったり、ちょっと習ったものから外れると何もわからなくなってしまうというデメリットがあります。

いろいろしゃべりましたが一言でいうと、前者のモードと後者のモードでは「応用力」の差が大きいということですね。

こちらも実例を一つ上げておきます。現地で一からドイツ語を学習し日常的に使っている実践モードの人が書いた作文。さっきと同じくミスは多いです。

*以下の文は正しくないので参考にしないでください。

Hallo Nana!

Wie geht’s dir? Letzte Woche habe ich eine Einweihungsparty gemacht und es war sehr schön. Hättest du da auch kommen! 

Meine neue Wohnung ist geil, weil es in der Innenstadt ist. Es gibt schönes Café neben hier. Mein alte Wohnung war auf dem Land und es war langweilig.

Bitte komm hier auch! Hast du Zeit am Nächste Samstag?

Liebe Grüße
Makoto(偽名)

引っ越しパーティーをしたので、来れなかった友達にメールで様子を伝えてください、という課題に答えたものです。

これを書いた方はこの時点でドイツ4年目で、職業訓練中のために日常的にドイツ語を話しています。レベルはB1。しかし持っている単語はかなり少なく、文法の知識もレベル相応のものしか持っていません。上の例の人のほうが覚えているかはともかく、たくさんの単語を勉強したはずです。

日常の中で覚えたものをそのまま適当に使っている感じです。geilとかね。

文法のミスは同じようにたくさんあります(黄色)↓

Hallo Nana!

Wie geht’s dir? Letzte Woche habe ich eine Einweihungsparty gemacht und es war sehr schön. Hättest du da auch kommen

Mein neue Wohnung ist geil, weil es in der Innenstadt ist. Es gibt schönes Café neben hier. Mein alte Wohnung war auf dem Land und es war langweilig.

Bitte komm hier auch! Hast du Zeit am Nächste Samstag?

Liebe Grüße
Makoto

文法でおかしくなっているところは表現も同じようにおかしいですね。普通は引っ越しをして新居においでよと誘うとき、Bitte komme hier auch!(文法的に正しいのはKomm bitte hierher.です)と命令形では誘いません。auchはなぜ入ってるのか分からないし。ここにも来てよ!の「も」って何?ってなりますよね。友達も来てるからあなたも来てよ!って意味のauchなのかな?それなら文を一から変えなければなりません。

ただ全体的にしっかり意味がつながっており、言いたいことはしっかりと伝えられています。分からない箇所はありません。ネイティブが読んでも完璧に理解できる文です。ニュアンス的にちょっと無礼かな、とか変だなというところはありますが。それはどう頑張ってもつきものなので仕方ありません。

☆☆

もうお分かりかと思いますが、テストモードで勉強した後に私のところに来た生徒さんたちはもれなく全員、実践モードに移行するための知識の統合作業を行います。それぞれに必要な時間をかけて。

なぜかというとそれが結果的に近道だからです。テストモードで勉強して忘れて・・・を繰り返してると応用力がつかないので結果的にテストにしか強くなれないんです。

「量をやってればいつかその時がきていつかペラペラと出てくる」のような神話はそのとおり、神話の話です。それは中国語や韓国語のように日本語母語者がすでに感覚的なモノを持っている近い言語の場合だと思います。遠い言語にそれは無理だと私は今の時点では思っています。

ドイツ語は感覚的にも日本語とほぼつながりがないので、あなたが知識で理解していないものは一生間違えるという確固たる事実があります。それは私が実際に、何十年も現地に住んでいるベテランの方々で、単語や文法知識は十分にあるのにとても変なドイツ語を話す日本人の先輩方を少なからず見てきたからです。

え、現地に何十年もすんでドイツ語も勉強したのにそうなの!?と驚いた方もいるかと思います。でも自動的な「いつのまにか話せる、聴ける」は魔法じゃないんだからあるわけがありません。自覚しよう。

理解して応用できる範囲でしか使えないのは当然です。

「聞くほうに労力が求められるドイツ語」とは悲しいものだと私は思います。でもわざとそうなってるのではなく多くは誠実にまじめに勉強したのだと思うのです。ただテストモードの暗記ファーストなのではないかと思う。統合がなく文法や単語がバラバラに頭の中に散らばっている感じがするのです。

そんなのさ、もったいなくないですか?ものすごい時間かけて勉強するのに!

でも遅くない。それに気づいて変えることができれば、誰でも今までの知識を無駄にすることなく統合することは可能です。

ただ忍耐と言語に対する考え方を変えて応用力をつけなければいけません。

もちろん勉強に正解不正解はありません。テストモードで勉強したってドイツ語はドイツ語だし。

でも教える側の私の立ち位置はだんぜん実践モード推しです。

カスタマイズをご希望の方はどんな勉強をしていてももちろん従いますが、それ以外の方で自分がなぜこんなに勉強しているのに会話ができないのか、と思っている方はテストモードで学習している可能性が高いです。どれぐらい統合できているか分からない、という方も一度ご相談にきてください。

本気で実践(ネイティブと会話)をするために勉強しているのなら、忍耐だけは必要です。それさえあれば実践モードでの学習のほうがずいぶん効率的で楽しいと思いますよ。あなたがたくさんしゃべれる楽しいレッスンを提供します♪

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やっぱり現地の語学学校がベスト。

最近戻ってきてくれた生徒さんを見て感心したこと。語学学校ではスピードとミスのバランスを習得できるのがベストだよね、と思った。